「上の子はどうだったっけ?」兄弟育児で比較してしまう時 心を落ち着かせるヒント
兄弟育児でつい比べてしまうこと、ありませんか
複数の子育ては、一人ひとりの成長を見守る喜びがある一方で、上の子と下の子、あるいは子供たち同士を無意識のうちに比べてしまうことがあるかもしれません。例えば、「上の子はこの頃もっとしっかりしていたような気がする」「下の子は上の子より活発(あるいは引っ込み思案)だな」「上の子の時よりうまくいかないのはなぜだろう」など、日常の中でふと頭をよぎる比較。
比べることに良い悪いはないと分かっていても、つい比べてしまう自分に少し嫌な気持ちになったり、その比較からくる焦りや不安でしんどくなったりすることもあるのではないでしょうか。特に時間にも心にも余裕がない時は、些細な違いが気になり、余計に疲れてしまうこともあるかもしれません。
なぜ私たちは子供たちを比べてしまうのでしょうか。そして、その比較から生まれるしんどさと、どのように向き合っていけば良いのでしょうか。
なぜ比べてしまうのか
兄弟姉妹を比べてしまうことは、決して特別なことではなく、多くの方が経験することです。保護者にとって、子供の成長は大きな関心事であり、発達の目安を知る上で、先に経験した上の子の成長や、同じ年代の他の子の様子が自然な基準になりやすいからです。
また、限られた時間の中でそれぞれの子供にどう関わるべきか、という時に、過去の経験(上の子の育児)がヒントになることもあります。悪気があって比べているわけではなく、子供たちのことを大切に思っているからこそ生まれる、ある意味自然な心理とも言えます。
しかし、この「比較」が、親自身を追い詰めたり、子供への見方に影響を与えたりすることがあります。
比較から生まれるしんどさと向き合う
兄弟姉妹を比べることから生まれるしんどさには、いくつかの側面があると考えられます。
- 親自身の焦りや不安: 比べることで「うちの子は遅れているのだろうか」といった不安を感じたり、上の子(あるいは他の子)のペースに合わせようとして焦ったりすることがあります。
- 子供への過度な期待や評価: 無意識のうちに比較の基準で子供を見てしまい、その子自身のペースや個性をそのまま受け入れにくくなることがあります。「どうして上の子みたいにできないの?」といった気持ちにつながる可能性も否定できません。
- 自己嫌悪: 「子供を比べるなんて」と自分を責めたり、上の子の時より育児がうまくいかないと感じて「自分はダメな親だ」と思ってしまったりすることがあります。
- それぞれの子供の個性を見失いそうになる: 比較のフィルターを通して見てしまうことで、一人ひとりが持つユニークな良さや、その子ならではの頑張りを見落としてしまうかもしれません。
これらのしんどさは、多忙な日常の中でさらに積み重なり、親の心に重くのしかかることがあります。
比較から少し距離を置くためのヒント
「比べることをやめなければ」と頭で分かっていても、すぐには難しいものです。大切なのは、「比べる自分はダメだ」とさらに自分を責めるのではなく、比較してしまう自分も受け止めながら、少しずつその影響を和らげていく視点を持つことです。
いくつか試せるヒントをご紹介します。
それぞれの子供の「個」を意識する時間を持つ
子供の成長を記録する際に、兄弟でまとめてではなく、それぞれの子供専用のノートやデジタルデータを作ってみるのも一つの方法です。その子が新しくできるようになったこと、好きなもの、面白かった言動などを書き留めることで、その子自身の成長や個性に目が向きやすくなります。比べる視点から、「この子自身はどうだろう?」という視点に切り替える練習になります。
過去の育児と「今」を区別する
上の子の育児経験は貴重な財産ですが、下の子の育児は上の子の時とは状況が異なります。子供の性格、生まれてきた環境(兄弟がいるかいないか)、親自身の状況(年齢、経験、忙しさなど)すべてが違います。過去の育児と比較してうまくいかないと感じる時は、「あの時とは違う状況だから当然だ」と考えてみてください。あの時はできたのに、と思うことがあっても、それは「今」のあなたが頑張れていないわけではありません。
完璧な成長曲線はないと知る
子供の発達には目安がありますが、それはあくまで目安であり、個人差が非常に大きいものです。「〇歳までにこれができなければいけない」といった基準に縛られすぎないことが大切です。情報として知識は持ちつつも、目の前の子のペースを尊重する意識を持つことで、無用な焦りや比較からくる不安を減らすことができます。
それぞれの子供と「1対1」の短い時間を作る
兄弟がいると、どうしてもまとめての関わりが多くなりがちです。意識的にそれぞれの子供と二人きりになる時間を短時間でも持つことを試みてください。寝る前の絵本の時間、一緒に買い物に行く時の帰り道、お風呂の時間など、たった5分でも良いのです。その子だけと向き合う時間を持つことで、兄弟という枠組みではなく、一人の人間としてのその子が見えやすくなります。
自分自身の心の余裕をほんの少し作る
比較したり、比べて落ち込んだりするエネルギーは、心の余裕がない時に生まれやすいものです。忙しい中で自分を労わる時間を持つことは難しいかもしれませんが、数分でも深呼吸をする、好きな飲み物をゆっくり飲むといった、ごく小さな休息を意識的に取り入れるだけでも、心のざわつきを落ち着かせ、比較のループから抜け出しやすくなることがあります。
比較してしまう自分も、頑張っている自分
兄弟育児は、一人っ子の育児とはまた違った難しさや葛藤があります。つい比べてしまう自分に気づいた時、「ああ、また比べてしまった」と自分を責めるのではなく、「兄弟それぞれのことを一生懸命考えているからこそ、比べてしまうこともあるんだな」と、頑張っている自分自身を労ってあげてください。
一人で抱え込まず、同じように複数の子供を育てている方々の話を聞いたり、自分の気持ちを誰かに話してみたりすることも、心の風通しを良くすることにつながります。「ホッと一息ペアレント広場」は、そんな時に安心して気持ちを話せる場所でありたいと願っています。完璧な親も、完璧な兄弟もいません。目の前にいる、かけがえのない一人ひとりの子供たち、そして頑張っているご自身に、温かい視線を向けていただけたら幸いです。